~あなたのJavaプログラムを速く、止まりにくくするメモリの仕組み~
はじめに:なぜGCを理解すべきなのか?
Javaを勉強していると、よく聞くのが「GC(ガーベジコレクション)」という言葉。
これは、使わなくなったメモリを自動的に回収してくれる仕組みです。
つまり、Javaが「メモリ掃除」を自動でしてくれる機能のこと。
とても便利な仕組みですが、その掃除のやり方(GCの種類)によって性能が大きく変わるのです。
もし、プログラムが急に止まったり、動作が重くなったりするなら、
それはGCの「掃除タイミング」や「やり方」が原因かもしれません。
この記事では、代表的なGCの仕組みである
G1GC と ZGC を中心に、違いと使い分けを分かりやすく解説します。
GCとは? 〜メモリ掃除の自動化〜
Javaプログラムでは、オブジェクトを作るたびにメモリ(Heap)が使われます。
でも、使い終わったオブジェクトを手動で消す必要はありません。
JVM(Java仮想マシン)が定期的に「もう使われていないオブジェクト」を検出して回収してくれます。
この自動回収の仕組みが Garbage Collection(GC) です。
しかし、GCが動いている間は一時的にプログラムが止まります。
これを 「STW(Stop The World)」 と言い、
大量のメモリを扱うアプリでは、この“止まる時間”が問題になるのです。
代表的なGCの種類
Javaには複数のGCアルゴリズムがあり、JVMの設定で切り替えられます。
ここでは、特に実務でもよく使われる G1GC と ZGC に注目します。
G1GC(Garbage First Garbage Collector)
特徴
G1GCは、JDK9以降で標準採用されているGC方式です。
ヒープを「小さなブロック(リージョン)」に分けて、
ゴミが多く溜まっている部分から優先的に回収します。
名前の「Garbage First(ゴミを最初に)」はここから来ています。
メリット
- ポーズ時間(止まる時間)を制御しやすい
- 大規模アプリでも安定して動作
- チューニング次第で高いスループットが得られる
デメリット
- 設定を誤ると性能が出にくい
- 超低遅延が求められるケースには不向き
向いている場面
- Webシステム、業務アプリ、バッチ処理など
- 「なるべく止まらずに、でも速度もほしい」アプリ
ZGC(Z Garbage Collector)
特徴
ZGCは、「止まらないGC」を目指して開発された最新のGCです。
非常に大きなヒープ(数百GB~数TB)でも、
数ミリ秒以下のポーズで動作するのが最大の魅力です。
内部的には、メモリアドレスの参照を“色付きポインタ”で管理し、
並行して掃除(マーク&リロケーション)を行います。
つまり、アプリが動いている最中にもメモリ掃除が進むのです。
メリット
- ポーズ時間が極めて短い(数ミリ秒以下)
- ヒープがどれだけ大きくてもパフォーマンスが安定
- チューニングがほとんど不要
デメリット
- 小規模サーバーではオーバーヘッドが大きく逆効果なことも
- ある程度のメモリ余裕と新しいJavaバージョンが必要
向いている場面
- リアルタイム性が求められるシステム(株式取引、チャット、ゲーム)
- ヒープが非常に大きいアプリケーション
GCの挙動を比較してみよう
| 比較項目 | G1GC | ZGC |
|---|---|---|
| 目的 | ポーズ時間を抑えつつ高スループット | 超低遅延・最小ポーズ時間 |
| ポーズ時間 | 数十〜数百ミリ秒 | 数ミリ秒以下 |
| ヒープ分割 | リージョン単位 | カラー化ポインタ管理 |
| メモリ効率 | 高い | やや高いがメモリ消費も多め |
| チューニング難易度 | 中程度 | 低(ほぼ自動調整) |
| 対応環境 | 多くのアプリで安定 | 大規模・高負荷環境向け |
| 推奨バージョン | Java 11以降 | Java 15以降(安定化) |
実務での選び方ガイド
小規模・中規模システムの場合
→ G1GC がおすすめ。
ヒープサイズが数GB程度なら、十分安定して動作します。
大規模・リアルタイム処理の場合
→ ZGC を検討。
ヒープが非常に大きい、または“止まることが許されない”環境に最適です。
GCチューニングの基本ポイント
-Xms:ヒープの初期サイズ-Xmx:ヒープの最大サイズ-XX:+UseG1GCまたは-XX:+UseZGCでGC方式を指定- GCログを出力して、停止時間と回収率を確認
GCがアプリに与える影響
GCの選択は、アプリのレスポンス・安定性・スループットに大きく影響します。
特に業務アプリでは「少しの遅延」がユーザー体験を左右することもあります。
例えば、ZGCを導入すると数百ミリ秒の停止が数ミリ秒に短縮され、
レスポンス速度が大幅に向上するケースもあります。
一方で、小規模アプリではG1GCの方が軽くて効率的。
つまり、「早いGCがいつも最適」ではなく、アプリの性格に合わせて選ぶことが大切です。
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まとめ
- GCとは、使わなくなったオブジェクトを自動的に回収する仕組み
- G1GCは「止まりにくくて安定」、ZGCは「ほとんど止まらない」
- 小規模システムはG1GC、大規模・低遅延システムはZGCが最適
- GCの違いを理解することで、Javaアプリの安定性とパフォーマンスが向上する
次回は、「GCログの読み方とチューニングのコツ」について解説予定です。
その前に、まずは一度、自分のプログラムがどのGCを使っているのかを確認してみましょう。
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